夢というのは願望を表すもの。
犬夜叉の夢には今、銀白の天使が舞い降りた。
犬夜叉の失恋(3)
「おい」
縁側で柱に寄り掛かりながらいつの間にか寝ちまったみたいだ。
呼ばれた声でゆっくり目を開けた。
「やっと起きたか」
そこにはのドアップ。
「ぐゎっ!!」
変な声を出して驚いてしまった。
「何て声出してんの?」
はまた無表情な顔に戻っていた。
「…もう朝なのか?」
「まだちょっと早いな」
少し明るくなった空を見てそれが4時か5時くらいである事がわかった。
「ちゃんと戻って来たでしょ」
「ケッ!!ったりめーだ」
「ちゃんとかごめの事守ってた?」
「多分な」
「何で多分だよ」
すると俺を見ていた瞳が少し上を向いた。
「おはようございます」
「どうも」
欠伸をしながら弥勒が出て来た。
それに続いて珊瑚、かごめ、七宝も部屋から出て来る。
「皆早起きなんだね」
「犬夜叉のうるさい声で起きてしまったんですよ」
弥勒が微笑みながら俺を見下ろす。
「七宝ちゃんもいるんだからもう少し小さい声で話しなさいよ!」
そう言ったかごめの方を向けなかった。
「…この匂い…」
が森の方を振り返る。
風にのってあの匂いが俺の鼻についた。
「この匂いは…桔梗!!」
考える前に俺は走り出してた。
少し走り出したあとを振り返る。
かごめじゃなくて…を目で追ってすぐ戻るって呟いた。
「…桔梗か…かごめ。いいの?」
「…犬夜叉の馬鹿」
「連れて行ってやろうか?気になるだろう?」
かごめは少し考えたあと、小さく頷く。
はかごめをお姫様だっこで抱きかかえた。
「安心しろかごめ。犬夜叉はお前以外に惚れないよ。珊瑚、弥勒、七宝、すぐ戻るから」
弥勒達は黙ったまま微笑んだ。
かごめは唇を噛み締めの服をギュッと握り締めた。
「泣くな。目が腫れる」
はかごめに微笑むと猛スピードで犬夜叉を追った。
「桔梗ーッ!!」
「犬夜叉…?」
そこには巫女姿の死人、桔梗がいた。
かつて俺が愛した奴。
「こんな所で何をしている…?私を追って来たのか…?」
「馬鹿言ってんじゃねぇよ。言いに来たんだよ」
桔梗は静かに犬夜叉を見つめた。
息を切らしていつものように桔梗を追って来た犬夜叉。
いつものように。
でも今回は目付きが違う。
「何を…言いに来たんだ…?」
「俺は…」
「ほら追いついたぞ」
ゆっくりとかごめを降ろしてやる。
そこには少し距離を置いて向き合っている桔梗と犬夜叉。
かごめは息を飲んでその2人を見る。
「大丈夫」
かごめの肩を優しく叩いてやる。
「何を…言いに来たんだ…?」
はっきりと会話が聞こえる。
「俺は…もう桔梗の事を想ってねぇ」
かごめの顔がいっきに明るくなる。
「もうこれだけ聞ければいい」
「もういいの?」
「うん」
「じゃあ戻るか」
またかごめを抱きかかえて今来た道を戻って行く。
このあとの会話を聞かずに。
「俺は…もう桔梗の事を想ってねぇ」
「…どういう意味だ?」
「もう楽になれ」
「それは私に死ねと言っているのか?」
「…そうかもな」
「変わったな」
「…なに?」
「以前の犬夜叉はそんな事は決して言わなかった。何がそこまで変えたのだ…?」
犬夜叉は少し大きく息をはいた。
「…だ」
「!!かごめでは無いのか…?」
「今俺の心の中にいるのは桔梗でもかごめでもねぇ。だ」
「か…」
「知ってんのか?」
「まぁな。もうどうでもいい事だ」
「ああ。それじゃあな」
振り返って地面を蹴りもと来た道を戻った。
ケッ俺の心の中にはか…キザすぎる。
自分で言っておいて恥ずかしい。
今の俺は頭がおかしいみたいだ。
「犬夜叉!!」
かごめの声に足を止めて振り返る。
「かごめ…」
「犬夜叉ゴメンね」
俺の方にゆっくりと近付いて来る。
「何の事だ?」
「あたし…さっき桔梗との会話聞いちゃったの」
「な!?」
あれを聞かれたのか!?
つい最近知り合ったを選んだなんて絶対かごめは泣いちまう。
何て慰めればいいんだ!?
「…かごめあれは「嬉しかった」
「…へ…?」
「桔梗の想いを切ってあたしをちゃんと見てくれる事がわかって嬉しかった」
「…なに言っ「今まで信じられなくて本当にゴメン」
よく意味がわかんねぇ。
何を言ってやがんだ?
「良かったな、かごめ」
木の影からがひょっこりと出て来た。
「!!!…?」
かごめにあの優しい笑顔を向けてやがる。
何なんだよ。
「ありがとうちゃん」
かごめもいつものように笑顔で答えた。
ゆっくりとの視線が俺に移る。
「もう不安にさせてやるな」
「何言ってやがんだ…?」
「さっき桔梗に言ってたじゃないか」
「!!あれは違ぇッ!!」
はっとかごめを見た。
目を真ん丸くして俺を見てる。
くそっ何でこうなった?!
「…違う…?」
震える声でかごめは一歩俺に近付く。
「違うってどういう意味…?」
言葉が出てこない。
喉に鉛が入ってるみてぇだ。
「…私はいない方がいいな」
この沈黙を見ては去ろうとした。
俺の視界からが消えようとした。
「っ!待てよ!!」
思わず腕を掴んでしまった。
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