半妖である犬の化身。

赤い衣には人の血が、その牙には妖の血が通っている。

その腕に抱かれるのは、桔梗の花でも空を舞うかごめでもない。













犬夜叉の失恋











「あたしは
目の前にいるのは青い着物の上に銀の衣を羽織った女。
鋭い目付きに青い瞳。
男みたいな喋り方だけどやっぱ体型は女だ。
さっき俺を切り付けて来やがった。
それを躱したあと女は俺の顔見て謝った。
かごめが名前を聞くと素直に答える。
さんね…どうして犬夜叉を襲ったの?」
「てっきりあなたが妖怪に襲われてるのかと思った、
だけど顔を見たら仲が良いって事がわかったから辞めた。
申し訳ない」
「ケッ!!俺が人間に殺されるかってんだ!!」
「…あっそう」
「でもありがとうさん」
「…別に」
は腰に刺してある鞘に刀をおさめた。
俺と同じ銀白の長い髪。
それが風が吹くたび宙に舞う。
その姿は誰かを思わせた。
だが誰かまではわかんねぇ。
妙に引っ掛かる。
「あなた……四魂のカケラ…持ってるね」
刀をおさめたは顔の向きはそのままにし、
ゆっくりとその視線だけを上に向けて、かごめを見た。
「…え」
「それちょうだい」
一瞬俺にも目で追う事が出来なくて気付いたら、
かごめの目の前にいやがった。
まるで風のように銀白の髪を靡かせながら
ジャンプして宙から勢いよく手を伸ばす。
「かごめッ!!!」
「かごめ様!!」
弥勒たちよりも、よりも、隣りにいた俺の方が一瞬速かった。
かごめを倒してそれを躱す。
「なんだダメなんだ」
「ったりめーだろ!!」
「ならいい。奪う事はあんまり好きじゃない」
なら今の行動は一体何だって突っ込みたくなったけど辞めた。
は俺と、かごめを見下ろす。
「また悪い事したね」
は振り返って立ち去ろうとする。
「待って!!」
それをかごめが呼び止める。
こいつはいつもお節介ばっかだ。
「何?」
首だけ横に向けて返事をする。
「あなた四魂のカケラが欲しいんでしょう?」
「まぁ欲しいと言えば欲しい」
「なら一緒に旅をしない?」
が今度は身体ごとこっちに振り返った。
俺とかごめは立ち上がって埃をたたく。
「旅?」
「そう、カケラの1つくらいあげるよ」
「なっ!!おい、かごめ!!」
いつもこいつはよくわかんねぇ。
「ほぅ」
「ただし私達を襲ってくる妖怪を倒すのを手伝ってくれればね」
「用心棒みたいなもんか」
「…どう?」
「まぁいい」


「おい何であいつを誘ったんだよ」
「明らか犬夜叉より強いじゃない」
「…」
確かに。
あいつのスピードは目で追えなかった。
つまり…俺より強いって事を意味する。
そのうえ多分美人だ。
女にしても男にしても美形だろうな。
胸糞わりぃ。
「珊瑚ちゃんや弥勒様、犬夜叉の負担も軽くなるじゃない」
「ケッ!!」
何も言い返せなくなって俺は森の中に歩いて行った。




ちょっと歩いてデカい木の下まで来た。
「…チッ」
俺は舌打ちをしてそこにドカッと木に背を向けて腰を降ろした。
そして木に寄り掛かる。
「何イラついてんの?」
上からあいつの声が聞こえた。
「ケッ!!お前ぇだよ」
俺はそのまま返事をした。
「それは心外」
上を見上げると枝にが座って俺を見下ろしていた。
「なぁにが心外だ」
すると雪のようにジャンプして俺の前にゆっくりと飛び下りる。
「弱いのが悔しいの?」
「誰が弱ぇんだよ」
「敢えて言わない」
「ァ?!」
は腰の刀に腕を乗せ、俺の目線に合わせるようにしゃがんだ。
そして俺の目を真っ直ぐ見つめる。
何だか照れて顔を背けた。
「私の目見なよ」
そう言われて顎を掴まれ、引き戻された。
またその綺麗な瞳が俺の目を捕らえる。
「…っ!!触んじゃねぇッ!!」
いてもたってもいられなくなって、手を払いのけた。
するとがバランスを崩して頭を地面に打ちそうになった。
「やべッ!!!」
とっさにの手を何とかもう一度掴んで減速させた。
頭を守るためにの頭に手をまわし、俺の胸に抱きよせる。
に覆い被さる状態になったけど、何とか頭は打ち付けなかったようだ。
「…息」
「…ぁ?」
俺の腕の中でがひょっこり顔を出した。
「息苦しい」
よく見るとかなり強くを抱き寄せてる。
「…礼くらい無ぇのかよ」
「そもそもあんたが原因」
「…ケッ」
「…犬…夜叉」
「…何だよ」
名前で呼ばれた事にドキッとしちまった。








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